第22回(2007年7月18日)「知的財産権の基礎と活用 - 著作権・商標を人材開発分野で活用するために報告」
「知的財産の時代がやってきた!」
さまざまな企業で「知的財産戦略本部」が設置され、「知的財産評価書」が作成されている。一方で一億総クリエーター時代とも言われるようになってくると知的財産に無関心では、ビジネスは進められない時代がやってきた。
知的財産権にも、産業財産権、著作権、その他の権利などがあるが、今回の研究会では主に著作権についての見識を高めるような内容で、メキキ・クリエイツの粕川敏夫氏にご講義いただいたが、知れば知るほど、参加者は「目からうろこ」状態で、研究会のあとも大勢の方が残って質疑応答や経験談に花が咲いた。
最初に著作権の定義がなされたが、「著作権とは、著作物について、創作者に与えられる独占権である」ことから、著作物の定義に及んだ。「著作物とは、思想や感情を創作的に表現したものであって、文学、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」である。もう少し詳しく言うと、小説・脚本・講演等・音楽・舞踏・無言劇・美術・建築・図形・映画・写真・コンピュータ・プログラムなどであって、事実やデータは著作物ではないし、アイデアや技法(作風)などには権利は及ばないのである。
たとえば、カタログ用に撮った写真でも「思想や感情を創作的に表現したもの」であれば著作権は発生するが、そうでないものは発生しない。松本零士の銀河鉄道999の「時間は夢を裏切らない。夢も時間を裏切ってはならない」に対し、槇原敬之の「約束の場所」の「夢は時間を裏切らない。時間も夢を決して裏切らない」は作風であるとされ、著作権を侵害したことにはなっていないのである。
また「文芸、学術、美術、音楽の範囲に属するもの」という定義では「どらえもん」の人形が、その製作前に漫画として発表されて「文芸」として著作権を確保していたが、トミーの「ファービー人形」の模造品である「ポービィー人形」は上記の定義に抵触しないとして著作権侵害にはならなかった。ファービーは大量生産される工業製品であって、美術の著作物ではないと判断されたのである。最初に漫画や絵、アニメなどの美術作品として発表しておけばよかったのである。
応用問題であるが、森進一が川内康範の作詞した「おふくろさん」の歌い出しの前に「いつも心配かけてばかり いけない息子でした」と、短い語りとメロディーを付け足したため、川内氏が歌わせないとしたのは、著作権の問題ではなく、感情の問題であろう。
著作権は、創作と同時に手続きなしで発生するが、自分が作品を創作したことを証明する、特に創作日時を証明しなければならない。そこで日付と作品を記載した製作日誌を記録することや、最近では作品とデータをメールやサーバーで保管することが勧められている。裁判等で争う場合に有利になるのが第三者による証明、すなわち公証人役場に確定日付を請求する(1件700円)や電子認証(1回300円)、または文化庁に著作権登録する(1件3,000円)などができる。
せっかく著作権を確保しても、それを活用しなければ何の意味もない。著作権の活用としては主に「著作人格権」として、公表してよいかどうかを決める権利(公表権)、著作者の氏名を表示するか否か(氏名表示権)、著作者の意に反して作品を改変できない(同一性保持権)と、「著作財産権」として複製権、頒布権・譲渡権・借与権、上演権・演奏権・口述権・展示権、翻訳権・翻案権など様々な権利が発生するが、これが一つ一つ金になる。
たとえば、著作権を侵害しているホームページに対して当該企業に警告を発することにより、そのホームページをやめさせることができれば、もちろん著作権を保護すると共にSEO(検索エンジン最適化)対策にもなる。われわれ研修会社としては、テキスト等へのコンテンツの挿入や著作権表示など実質的な役に立つのである。
詳しい活用については、それこそ弁理士のお世話になったほうがいいが、われわれビジネスに携わるものとして著作権の確保と活用について精通していることが重要であることが、様々な事例を挙げて解説された。知的財産権を、侵害しないかどうかを恐れながら仕事をするよりも、一歩踏み出して企業戦略の重要な位置づけとして活用すべきことが理解できた。
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