インストラクターの知恵袋(3) 時間が足りない!
多くのインストラクターの悩みは「時間が足りない!」です。最初は余裕を持って始めていたのに、いつの間にか押せ押せになってきて、挙句の果ては「やっぱり足りない」のです。「皆さん、お忙しいとは思いますが、このままですと予定していた内容が終わりそうもないので、あと1時間延長します」とも言えないし、「すみません、時間の関係でこの部分は割愛します・・・」という言葉を「もう二度と使わない」とあれほど誓ったのに!
研修後に実施される「参加者アンケート」の自由記述欄に書かれる多くの要望のひとつが「時間どおりにやってください」「研修内容をすべて網羅して欲しかった」など時間に関するものです。それで多くのインストラクターの悩みの種が「時間」なのです。
時間との戦いは、インストラクターにとって上記のほかにも多くの問題を抱えることになります。「足りない!」と分かったときから、焦りが生じ、どう進めたらよいかに気が取られるので研修内容そのものの進め方がおろそかになります。結論の部分では、早く終わらせることに集中するために、結論として強調して伝えなければならないことを、故意にもしくは何気なく言い忘れてしまいます。その結果として研修後の達成感が喪失してしまうのです。
研修の主体者である参加者にとってもインストラクターの時間との戦いは損失となります。インストラクターのそわそわとした態度が見て取れると、参加者のほうも「大丈夫だろうか?」と不安感が募ってきます。まして終わり近くになって、先のような言葉をインストラクターが言い出すとインストラクターに対する不信感が沸いてきて、挙句の果ては研修そのものに対する不満となってしまうのです。
なぜ時間が足りなくなるのか?そもそも時間通りに進めるためにはどうしたらよいのか?もしも時間通りに終わらないことが予想されたらどうやって時間通りに収めるか?時間を延長しても参加者に怒られない延長方法はあるのか?
当たり前の話ではありますが、時間が足りなくなるのは当初設計したとおりに進めていないからです。それは、時間設計が現実的でなかったのか、設計した時間通りにやらなかった、余計なことを入れてしまったからです。だから、時間設計がなされているのなら、その設計どおりに進められるか前もって練習してみることです。コースの作り方にもよりますが、設計者の予測時間が大まかなものであるなら、インストラクターはその中味の時間配分を、過去の経験に照らしてしっかりと予測しておかなければなりません。
全体の時間設計の中で、また章ごとの時間設計の中で、余裕時間を入れておくことも出来ます。つまり本当は合計55分で終わる計算になっていても、余裕時間を5分とか10分加えておくのです。もう一つ出来ることは、もし時間がなくなったら割愛してもよさそうな部分を用意しておくことです。ただし割愛してもコンテンツの理解を損ねたりしないように簡単な説明をするとか、他の部分で補完できるように構成しておく必要があります。
設計した時間どおりに出来ないのはインストラクターの責任です。特に最初の部分では、余分なことを入れないで、時間通りか、少し余裕を稼いで置くぐらいのつもりで早め早めに進めて行きます。1日に3,4箇所のチェックポイントを設けておいて、そこまで行かなかったら早めに調整することも大切です。余裕が出ても、その余裕時間をたっぷりと使い果たさないようにして最後まで取っておきましょう。貯金みたいに!
筆者の経験した好評だった研修の多くは、時間より早めに終わったものでした。一日6時間の研修を4時間とか5時間で終えるのは早すぎますが、15分とか20分前に終えたときにはなんとすっきりした気分になれますし、参加者の評価も良いものなのです。「皆さんのご協力のおかげで早めに終わることが出来ました。ありがとうございました。」なんて挨拶が出来たら格好がいいですね。
そうそう、どうしても時間を超過したいときに、どうしたら参加者に怒られずに、いえ、むしろ協力的に時間延長を許可してくれることなんてありますか?筆者のやったことですので、必ずしもうまくいくか分かりませんが・・・。終了時間より少し前にこう言いました。「皆さん、これでお伝えしたいことはすべて終わりました。皆さんのご協力で早めに終えそうで感謝いたします。・・・ただひとつ、皆さんに大変お役立つと思われる情報をお伝えできれば、一層有意義な研修として終えることが出来そうです。皆さん、だれしも○○のようなことをお望み(お悩み)ではないでしょうか?そのためのすばらしい情報を30分ほどでお伝えしたかったのですが・・・お時間がないようなので、いかがいたしましょうか?」このときの参加者の反応は?ご想像にお任せいたします。
2008.12.15
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