ピグマリオン効果
■ピグマリオン効果
ピグマリオン効果とは、「人間の態度決定は、自分に対する他者の評価や扱い方に影響される」という心理学の法則である。平たく言えば、人は自分の扱われ方によって自分の言動を変える、ということである。これを活用した「ピグマリオン効果による動機付け」とは、相手の扱い方、相手への接し方を調整することによって、相手の不適切な言動を、適切な言動に変えさせる動機付けを行おうというものである。
■ピグマリオンとは
ピグマリオンとは、ギリシャ神話に登場する人物で、その物語は、イギリス劇作家バーナード・ショウの戯曲「ピグマリオン」として再現され、その後の映画「マイフェアレディ」の原作のヒントになった。その中で、女性イライザはヒギンス先生からの扱われ方について、信頼を寄せる男性に次のようなことを言うのである。「レディと花売り娘の違いは、どう振るまうかではなく、どう扱われるかにあるんです。先生は、いつも私を花売り娘とししか扱ってくれません。しかし、あなたはいつもレディとして扱ってくれます。だから私は、あなたの前ではいつもレディでいられるんです。」
つまり、自分の扱われ方で、自分の言動が変わるということである。
■ピグマリオン・マネジメント
ピグマリオン効果を活用した動機付けのためのマネジメント行動についての考え方と具体的な行動は次のようなものである。
期待感を抱かせる
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優れたマネジャーは、「高い成果を達成できる」という期待感をメンバーに抱かせることができる能力を持っている。
無能なマネジャーは、そのような期待感をメンバーに植え付けさせることができないばかりか、「君は成果を上げられない人である」と刷り込む。
人は、他人からの好意を求めるため、基本的に他人の期待に応えようとするものである。
<マネジャーとしてやるべきことは、>
(1)メンバーの状況、能力を把握して、適切な期待を設定し、メンバーに伝える。
(2)なぜそれが本人にとって現実的で実現可能なものであるかについて説明する。
*予測の自己実現…人は、「自分がこうなる」と自身で予測した場合には、それが実現される可能性が高い。これを心理学で「予測の自己実現」という。その理由は、 自分の予測は自己の正当化によって自分の中に刷り込まれ、それによって自信が生まれ、迷いが減少し、行動がその予測に向かって活性化、効率化されるためであると考えられる。
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高い期待と成果の関係
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- 相手への期待のレベルとそれに対する相手の能力レベルとのバランスによって、その結果得られる成果は異なる。
- マネジャーがメンバーに大きな成果を期待し、その後の扱い方が、「どうせできないだろう」のように、それに見合ったものでなければ、メンバーは自分の言動を変えようとせず、期待した成果もあげられない。
- しかし、マネジャーがどれだけメンバーに期待するかによって、メンバーの扱い方を適切なものに調整するならば、期待の大きさとメンバーの成果とは正比例する。
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低い期待によるマイナスの自己実現
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- マネジャーがメンバーに「成功の見込み無し」と決め付け、現状もそれを証明するかのような状態にあるとき、メンバーは、自己イメージの低下とプライドを維持するのが難しくなってくる。
- そのためメンバーは、いま以上に傷つくことを恐れ、自身の行動をより消極化させる。
- この状況がさらに悪化し、とても現状を受け入れられなくなると、起死回生の大きな勝負に出て、大失敗を起こす。
- こうして、マネジャーの低い期待に合わせるように、マイナスの自己実現が達成される。
- また、沈黙や無視は結果として低い期待を伝えることとなる。沈黙や無視は否定的な感情が伝わるためである。
- マネジャーは一般的に高い期待を伝えることは苦手であり、指導・叱責という名の低い期待を伝えることが多い。
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