メラビアンの法則・誤解と事実
■メラビアンの法則とは
話し手が聞き手に対して与える影響力について、以下の3つの手段に分け、それぞれの影響力の強さのバランスを示したのが、メラビアンの法則である。一言でいえば、「聞き手への影響力は、言葉によるものが低く、言葉以外によるものが圧倒的に高い。」ということである。
言葉(言葉の意味)=7% |
声(声の大きさ・質、話し方など)=38% |
態度(見た目、表情、動作など)=55% |
この法則は、アメリカの心理学者、アルバート・メラビアンが1971年に提唱したものとして有名であるが、これはメラビアンが提唱したことそのものではなく、後世において、「コミュニケーションにおいては、言語情報よりも非言語情報が重要である。」ということを説明するために、都合よくアレンジされたものであるという説がある。これをそのまま解釈すれば、「中身よりも見た目が大事」となってしまう。本当にそうなのだろうか。ここでは、メラビアンがどのような実験をし、何を提唱したかったのかを検証してみたい。
■メラビアンの実験
メラビアンの実験の目的は、聞き手が「言語情報」「聴覚情報」「視覚情報」の3つの手段で、それぞれ矛盾した情報を与えられたときに、どの情報を優先して受け止めるかということであった。
そして、その実験内容は次のようなものであった。
- まず、「好意」「嫌悪」「中立」をイメージする言葉を3つずつ設定する。(例えば、「好意」は、“honey”といったようなもの。)
- 次に、これら9つの言葉を、「好意」「嫌悪」「中立」の3つのイメージで、それぞれを録音する。
- さらに、「好意」「嫌悪」「中立」を表した表情の顔写真を1枚ずつ用意する。
- その上で、録音と写真をさまざまに矛盾した組み合わせをつくって被験者に示し、それぞれについて被験者が最終的に「好意」「嫌悪」「中立」のうちのどの印象を持ったかを質問する。
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■メラビアンの結論
メラビアンが実験の結果として結論付けたのは、発信者が受信者に対して与える影響は、それらが矛盾していた場合には、視覚情報>聴覚情報>言語情報の順に優先されるということである。
しかし、実験そのものはずいぶんと単純なものであったといわざるを得ない。視覚情報として示されるのは写真だけであり、表情の動きなどはなく、聴覚情報も演技であるので、どこまで忠実に示せたか不明である。また、言語も単語のみで、前後の文脈を無視しているなど、この実験では、「メラビアンの法則」として冒頭に上げた「聞き手への影響力は、言葉によるものが低く、言葉以外によるものが圧倒的に高い。」ことを言い切るには、無理がある。例えば、プレゼンテーションを受ける聞き手として、それに対する対処を判断するときに、その内容よりも発表者の話し方や態度を優先させて結論を出すとは考えにくい。メラビアンの実験は、あくまでも諸手段の矛盾が無いように話すべきであることや、言葉だけでなく話し方や態度を適切化することで説得力を高めることができる、ということを示しているだけなのではないだろうか。
以上
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