ダイバーシティ
■ダイバーシティとは
ダイバーシティとは、直訳では「多様性」であるが、正確には“Diversity & Inclusion”であり、「多様性の受容」という意味である。ダイバーシティは、人のあり方の多様性を受け入れようとする考え方である。人種、性別、年齢、国籍、生まれ、外見、価値観、宗教、性格、などについて、「かくあるべし」といった画一的な型にはまることを強要せず、各自の個性を認め合い、活かしあいながら社会をつくっていこうとする姿勢である。
このダイバーシティは、人権問題だけでなく、企業のおける人材のあり方としても注目されてきている。すなわち、環境変化などによる多様化に直面している企業活動では、それに適応できるようなしくみや人材活用が求められるからである。
■企業における「ダイバーシティ」の定義と意義
ダイバーシティは、「多様な人材を活かす戦略」と定義づけられる。従来の企業内や社会におけるスタンダードにとらわれず、性別、年齢、国籍などの多様な属性や、多様な価値・発想を取り入れることで、ビジネス環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、企業の成長と個人の幸せにつなげようとする戦略である。
企業ではこれまで、「管理職は男性のみ」といった性別役割分担意識や、「上司より先に帰るものではない」などといった仕事に対する姿勢意識など、明文化、暗黙のいずれかにより、画一化された「あるべき論」に支配された人事制度やマネジメントが行われてきた。そして、この「あるべき論」的発想が、その組織のスタンダードになっていた。
しかし今日では、環境変化への不適応を起こしている従来のスタンダードを打破し、新たな価値や発想を導入する必要性が高まってきている。それは、企業にとっても、そこで働く社員にとっても、である。ダイバーシティは、企業の経営目的と、個人の就労ニーズをうまく結びつけることで、企業の成長と個人の幸せを実現させることである。
ダイバーシティの本質は、異質・多様を受け入れ、違いを認め合うことであり、それによって「同質」だけでは実現が難しい新たな価値の創造や、人材の確保、社員の生きがい・働きがいを実現しようとするものである。ただし、何を同質とし、何を持って異質とするかは、時代や文化あるいは集団によって異なる。すなわち、唯一の正解といった普遍的なダイバーシティのあり方は存在しない。
企業の人事の目的は、人間としての普遍的な理念をベースにしながら、社員一人ひとりが、自分が選択したライフスタイル・働き方を実現し、その中で持てる能力を伸ばし、最大限に発揮する状態を実現することである。自らの生き方が組織に受容されることによって、さらなる能力の発揮・向上がなされ、企業の環境適応や成長の原動力になろうことはいうまでもない。そのために、「多様性の受容」あるいは「多様性の活用」が求められるのである。
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