「若手ジリツ化」セミナーでのプレゼンテーション報告と所感
先日、日経BPマーケティングが主催したセミナー「新入社員・若手社員の育て方で会社が変わる!」にてプレゼンテーションする機会を頂いた。テーマは「ジリツ(自立/自律)型社員の育成」である。約150名の皆様(多くは企業内で人材開発に関わっている皆様)にお聞きいただいた。
プレゼンテーションでは「自立」と「自律」の言葉の原義を振り返りつつ、自社のジリツを定義するためのツール(インタビューフォーマット)をご紹介した。また、具体的な研修として、日経BPマーケティング社と共同開発した階層別(新人・若手・中堅)の自律型人材育成研修(日経ビジネスや日経ビジネスアソシエを活用)をご紹介した。アンケートを拝見したが一定の評価を頂けたようである。
さて、このプレゼンテーションの準備の過程で、自立・自律化に関する様々なデータを調べた。またそのデータをもとに日頃の問題意識と照らし合わせて考えた。ご存知の通り、多くの論点のある「ジリツ(自立/自律)型人材の育成」であるが、1つ興味深いデータをご紹介する。
財団法人日本青少年研究所
「高校生の心と体の健康調査-米中韓日比較-」というデータがある(HPにアクセスすれば概要は入手可能)。これは文字通り、アメリカ・中国・韓国・日本の高校生(合計7,000名、2010年6月~11月に調査)の心と体の健康を同じ調査項目でアンケートをとり、比較しているものである。その調査項目の中に「ジリツ(自立/自律)」の前提となる自己肯定感に関連する調査項目があった。
例えば、
Q「わたしは価値ある人間だと思う」
→YES 「アメリカ57.2% 中国42.2% 韓国 20.2% 日本 7.5%」
Q「自分を肯定的に評価するほうである」
→YES 「アメリカ41.2% 中国38.0% 韓国 18.9% 日本 6.2%」
などなど。他にも調査項目があるが、皆さんのご想像の通り、「日本は他国と比較してパーセンテージが低い」ことは共通していた。これを「日本人は謙虚だから…」の一言で済めばいいが、同じ調査の下記データを見たとき、実際はそうではないように思えた。
それは、
Q「親が自分の優秀さを評価している」
→YES 「アメリカ91.3% 中国76.6% 韓国 64.4% 日本 32.6%」
である。つまり、高校生個人がそもそも「謙虚な性格」なのではなく、親がその高校生個人に「自己肯定感」を与えていないことが起因で「謙虚な(?)性格」という結果が生れているという見方が出来る(多分親の世代も、親の親の世代から同じような育てられ方をしている)。すべては因果関係である。自立・自律的な人材を育成したかったら、(やや中長期の取り組みになるが)自宅に帰って自分の子供に存在を認めてあげる言葉をかけ続けることが本質的な解決策なのかもしれない。
*因みにこのデータは当日のプレゼンテーションでも参加の皆様の反応が良かった。
親子の関係だけではなく、企業内人材開発課題でも構造は同じである。「部下のコミュニケーションスキルが低い」という上司に限って、その上司本人がそもそも「相談しにくい雰囲気」を作っている。「うちのメンバーには創造力が足りない」というリーダーに限って、そのリーダー自身がそもそも「部下のアイデアをつぶすような言動」をとっている。ここでも、人材開発とは会社の中での役割を起点として因果関係でしかない。企業が若手にジリツ(自立/自律)型人材への変革を求めるのであれば、(いきなり研修を実施するのではなく)まずは社長が、まずは上司が、まずは人材開発部が「ジリツ型」の手本を見せること、それによってよい因果関係を作っていくことがもっとも効率的で効果的であると思う。
【入江】
2011.04.04
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