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すばらしい新人たち
 新人研修の季節が終わった。 IT系の多くの企業では4〜6月の3ヶ月に亘って集合教育がなされている。 この後もOJTとOffJTを積み重ねて一年間じっくりと育ててゆく企業もある。 新人研修を担当させていただくたびに、最近の若者たちの能力の高さに驚いている。

 学生時代から企業に入って活躍することを目標にしていることもあろうが、皆やる気満々である。 「何でも教えてください。どんどん学びます。」「何でも言いつけてください。何でもやります。」 そうした気持ちがビンビンと伝わってくる。

 受け入れ職場としても大いに期待しているようで、教育部門に対する要請は大きい。 「すぐに使える若者として送り出して欲しい。」「職場ではあれこれ教えていられないから、必要なことはみな教えておいて欲しい」 教育部門も、現場で役立つ若者を一人でも多く送り込みたいと必死である。

 しかしここにひとつの大きな落とし穴がある。 若者は食い気満々のひな鳥のごとく、口を大きく開けて待っている。 親鳥である教育部門は、長期間に亘ってせっせせっせと餌を運んでは食べさせる。 数ヶ月から一年後、たっぷりと(頭の)肥った若者たちが現場に配属されることになる。 そこで、何かが起きることになる。

 現場に配属された若者たちは、またもや口を大きく開けて餌を待っている。 「何でも教えてください。学びます。」「何でも言いつけてください。言われたとおりにやります。」「仕事の結果を評価してください。よいところを褒めてください。」 ところが、現場はそれほど暇ではない。 「言われた仕事のやり方は自分で考えてやってみろ。」「なんでもできることは提案して欲しい。」「仕事が終わったら自分から報告してくるものだ。」 現場には若者に食べさせる餌などないし、いちいち教えている暇はないのだ。

 配属された若者と、受け入れた現場との大きなギャップがここに生まれる。 お互いが「そんなはずではなかった。」と落胆し、教育部門への不信や疑念が発生してくるのだ。

 現場では、配属された新人には、

1.指示・命令を受ける。
2.仕事の4つの重要なポイント(目的・納期・品質・コスト)を確認する。
3.手順の仮説を立てる。
4.必要な情報の収集を行う。
5.手順どおり実行する。
6.最後に成果の確認・検証をする。

という手順に自主的に取り組んで欲しいと願っている。 しかし、多くの新人教育の場合、この実際の仕事の手順を教えていないし、先の構図のように「迷いのないようになんでも教えてあげる」というスタンスで情報のみをたっぷりと与えていることが多い。

 わが社が担当させていただいているクライアント企業の新人教育では、この問題を解決するようにお手伝いさせていただいている。 大まかな進め方は次のとおりである。

1.実際の現場における仕事の進め方のモデルを教える。
2.自分たちにも、現場にも意味のある課題を与えて、その成果に向けての計画を立てさせ、実行させる。
(仕事の内容は企業によって異なるが、「4月からの新組織の紹介」「各事業部のソリューション・事例の共有」「アカウントプランの基礎となる情報分析」などである。)
3.仕事の成果を生み出すために必要と思われる情報の収集方法を教え、収集させる。
4.収集した情報を分析して、成果を得るための作業を実行させる。
5.仕事の手順、やり方、収集した情報、成果などを発表してレビューさせる。
6.企業によっては、この後実際の業務を与えてやってみさせるところもある。

 これらを軸として、必要なタイミングで、商品研修、マナー研修、情報収集法(Web検索、インタビュースキルなど)、現場インタビュー、財務分析手法、ロジカルシンキング、プレゼンテーションスキルなどをカリキュラムに組み込んでおく。 魚の小骨のように組むのである。 大骨を実行してすばらしい成果(お頭)を得るために必要な小骨をぐんぐんと吸収してゆく仕掛けである。

 彼らの情報収集力はすごい。 何しろ多くの並み居る競合に打ち勝つために企業情報を集め、この会社に入ってきたのである。 彼らのプレゼンテーションはすごい。 パワーポイントの造り込み、アピールの仕方など我々が新人だった頃を思い出し比べると雲泥の差である。 彼らの思考能力はすごい。 新しく、しかもさまざまな方向からのものの見方、既成にとらわれない新しい発想・・・など目を見張るものがある。

 若者たちの目はきらきらと輝き、自律・自立的に研修を進め、自発的な行動がクラス全体に活気を生み出す。 落ちこぼれなど一人もいない、いや彼ら自ら落ちこぼれを出さないようにお互いを気づかっているのである。 すばらしいチームワークである。 彼らが現場に配属されたとき、現場の人々に即、役に立ち、新しい空気を持ち込み、会社の将来を担う若者として、いきいきと働いていくに違いない。
2007.06.24

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