新任管理者育成研修(IT企業編)
背 景
IT系企業において新任管理者の中でかなり多くが技術者である。エンジニアがマネジメントをすることのメリットは最近の経営の話題ともなってはいるが、新任管理者の中には管理職にはなりたくないと思っている者も多いと言う。自分は管理者ではなく、超一流の技術者、行く行くは博士号を取り、ノーベル賞を取るような発明・発見をするのだから管理職になって部下の面倒を見るなんて真っ平だと言うわけである。
課 題
企業はチームで仕事をしている。それは5人揃えば10人の仕事、100人揃えば300人の仕事ができるからだ。ノーベル賞を取って、会社の重役の座を蹴った田中耕一氏でも研究は仲間のチームとともに苦労したはずだ。管理職となってチームを率い、もっと大きなプロジェクトを動かしてこそノーベル賞ものの研究が出来るというものである。しかし若い技術者はそれを分かっていない。
技術系の新任管理職にチームで仕事をするということ、またその中で必要なコンピテンシーであるリーダーシップや部下育成を如何に教えていくかが課題となっていた。
研修内容
企業C様においては既にリーダーシップについてグループ研究で学ぶべき点をまとめさせるという「歴代のリーダーの事例研究」が新任管理者研修としてプログラムされていた。
幸いにして歴代のリーダーは技術者上がりが多い。それでそのリーダー研究を受けて、以下のような研修内容を設定した。(9:00-17:00の1日研修)
- まずリーダーシップの理論を提示して、歴代のリーダーが発揮したリーダーシップと結び合わせ、特にチームで仕事を大成させている点について気づきを与えることとした。
- ではどのようにしたらそうしたリーダーシップを発揮できるのか、実際のリーダーシップの発揮の仕方を状況対応リーダーシップ®(CLS社)を使って身に付ける。
- 次にチームワークを発揮するためには部下育成の感覚が大切ではあるが、それを身に付けることは簡単にはできない。そこで最近富に脚光を浴びてきた「キャリアデザイン」の概念と実際の進め方を教える。
- 管理職に必要となるのは、部下やメンバーを具体的にチームの仕事に巻き込んでゆくことである。この方法は「コーチングのスキル」習得でカバーする。コーチングスキルの中でも短時間で身につく「傾聴」と「承認」のスキルを徹底的に習得させる。
- 最後に、コーチングのスキルを使って部下指導をするケースをロールプレイで締めくくる。ケースは実際の職場でありうる3つのケースを扱って具体性を体験させる。
HRD研究所からの提案による研修導入のメリット
上記のカリキュラムにより得られたメリットとしては、以下の点を挙げることができる。
- 先人の具体例から理論を引きだし、理論を具体的なスキルに落とすことによる納得感を得る。
- キャリアデザインの概念を理解した上で具体的なコーチングスキルで部下指導をする方法を身につける。
- コーチングスキルは様々な場面で活用できることを知る。
成果報告
HRD研究所はこの研修のコース作成(カリキュラムとテキスト)と講師用ガイド、研修ツールの作成を依頼され、C社の講師陣のトレーニング(TTT)を承った。
現在、トレーニング済みの講師による研修が展開されているが、参加者の参加度合いも上々とのことである。
成功の要因としては以下の点を挙げることができる。
- 創業以来のリーダーが築き上げた成功例から学び始めることは納得感があること。
- 技術者には特に理論を明確に示し、それを具体的に展開するスキルを習得させたこと。
- 職場で起こりそうな具体的なケースでロールプレイをすることにより現実感があること。
- 昨今の管理職に必要とする「リーダーシップ」「キャリアデザイン」「コーチング」を有機的またコンパクトにまとめてカリキュラムできたこと。
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