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名選手を名監督にする
 「名選手、名監督ならず」という言葉があった。 野球界の話であると思うが「有能な選手が必ずしも有能な監督にはならないだろう」という意味である。 選手経験があったほうが戦略や戦術を展開する上で有利であるとは思うが、監督から与えられた指示に従って最大のパフォーマンスを発揮する選手の立場でものを見るのではなく、大局からものを見て的確な指示を出すことは選手経験だけでは不可能ということであろう。

 しかし最近の名監督、長島、王、野村、バレンタインの諸将は往年の名選手であったし、サッカー界でもオシム監督は大変な名選手であったと聞く。 一方で昨今の話題になっている相撲界の諸事件は親方衆が名監督ではないことを赤裸々に示している。 相撲界の場合、改革の必要のない閉鎖された社会であったがゆえという別の理由もあるとは思うが、日本の数少ない国技と考えるとお恥ずかしい限りではある。

 ビジネスの世界においてはどうだろうか。 少し古い話ではあるが、トヨタの販売部門ではトップセールスの中である時期に来ると、このままセールスで実績を上げていくのか、管理職のコースに進むのかを問われ、管理職コースを選んだものは営業研修所の教官を数年経験することが求められていたと聞いた。 管理職になるものは人を育てる意識と感覚を教える立場から身に付けるべしという、企業内研修を生業(なりわい)とする筆者にとっては大変好ましい話であった。

 最近「新任マネージャー研修」が注目を浴びている。 新たにマネージャーになるにはやはりワーカー(プレーヤー)として優秀な実績を上げた中から選ばれているようではあるが「名選手、名監督ならず」の言葉よろしく、名選手を2,3日の簡単な研修で名監督にしようとするのではなく、何日も、いや何ヶ月も、場合によると1年間掛けてさまざまな角度から管理職に育てていく傾向である。 しかも実戦型を取り入れて、テーマごとに2,3日の研修の後、現場で実践してきてはまた研修に臨み、その結果を振り返っては次のテーマに挑むという方法である。 OnとOffを巧みに組み合わせたブレンド研修が求められている。

 10年ほど前から「公平な研修から、公正な研修への転換」と言われてきた。 同期入社の人材にいつまでも同じ教育を公平に行うのではなく、必要と思われる人材に必要と思われる公正な教育を施す時代になった。 名選手を名監督に育てる時代になったのだ。 
2007.10.08

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