サービス セミナー 研究サロン 事例集 企業情報
『新任管理者の育成』第2回
第1回では、「管理者の役割3つのキーワード」について確認してきました。3つのキーワードとは、「目標のブレークダウン」「経営資源の活用」「仕事とヒトのバランス」でした。第2回ではこれらをふまえ、仕事のしくみづくりについて考えていきます。


『仕事のしくみをどうする?』

時計は午後5時5分になろうとしていた。課長の西陣は、残業をせずに帰るつもりであった。今日は、娘の誕生日であり、家族で外食をする予定にしていた。そんな楽しみのある外食であったが、会社のエレベータに乗ると、少し気が滅入った。夕方に部下の三条から言われたことが気になっていた、

三条の話は、課内の仕事の分担についてであった。三条は課内で、嵐山、有栖川と連係して仕事を進めているのだが、いつも嵐山のところで仕事が滞ってしまうため、仕事の流れを少し変えて欲しいというのである。三条は『課内の仕事の流れの中で、こういう問題が起こっている』と強く訴えてきたが、西陣は『考えておく』と返事をし、ひとまず三条を帰していた。

西陣の課は営業セクションである。課内では、顧客からの注文をいったん嵐山がまとめ、課長である西陣の決済を得て、商品を手配し、それを三条に伝える。三条は、それにしたがって直接、顧客との折衝を行い、そのあとで、有栖川が伝票などの処理をするという仕事の流れである。

ところが、西陣も外回りが多く、嵐山が決済をもらいに行っても不在のために、その後の業務が遅れるというのである。このことによって直接的に困るのは三条である。それだけ顧客フォローが遅れるからだ。三条は、「承認」といっても自分で判断できるものもあるので、自分の担当先の注文については、自分に決済させて欲しいというのである。つまり、自分に決裁権限が無いため、顧客に迷惑がかかることになるため、自分に決裁権限を与えて欲しいというのである。

西陣は、『決済は課長の役割であり、それを渡すことは、課内の秩序が乱れるもととなる』と考えていた。つまり、少々顧客フォローが遅れても、課内の仕事に混乱を出さないことが大切だ、ということである。

エレベータが1階に着き、そのドアが開くと、そこに嵐山が立っていた。嵐山は西陣を見つけると声をかけた。
「あっ、課長。三条さんから話があったかと思いますが、その件はどうですか。」

西陣は、いきなり声をかけられ驚いたが、「ああ、あの件ね。もう少し考えさせてくれよ。」と嵐山に話した。
「ですが課長。顧客からの注文は、明日もまたありますので、すぐに三条さんの意見を認めてくれませんか。」

「おい、ちょっと待てよ。だいたい、君が仕事をうまくこなしていれば、問題は起きないはずだろ。君が何とかしてくれなければ困るじゃないか。話は、明日だ。明日。」
嵐山は、まさか自分に責任がある、などと言われようとは思っていなかった。

「はぁ…。」返す言葉を失った嵐山は思った。『冗談じゃないよ。注文はいつ来るか分からないし、そもそも課長の不在が原因なんだから、それをオレの責任だなんて、冗談じゃないよ。この仕事の流れでこれまでずっとやってこれたのは、三人で協力しながら何とかこなしてきたんだ。こんなときに必要なのが課長じゃないのか。課長っていったい何なんだ。』


【組織のコントローラー】

会社も、その中にある「課」も組織です。組織とは『特定の目的や役割を達成するために、構成された人間集団である』と定義付けることができます。そして、管理者はこの「組織」のコントローラーであり、課に与えられた目標達成に対する責任者でもあります。

課をコントロールするという課長の役割は、具体的にどのようなものなのでしょうか。それは、大きく次の5つに分けることができます。

  1. 課長は、課の役割達成のために必要な仕事の進め方やルールを設定する。
  2. 課長は、メンバーがそれぞれの担当業務をうまく進められるよう分担し、それに見合った責任と、必要な権限を与える。
  3. 課長は、仕事をスムーズに、また効率的に進められるよう課内のコミュニケーションがうまく運べるようにする。
  4. 課長、はメンバーが仕事を進める上で起こる意見の対立や、問題を解決するための調整を行う。
  5. 課長は、課の役割達成に向けて、メンバーの分担させた仕事に対するメンバーをやる気を高める。

課長は、このような役割を担うことで、課という組織を効率的に機能させることができます。課内で何か問題が発生した時には、課長として、これらの役割を強化することで、その問題を解決したり、課全体のパワーを向上させることができます。反対に、課長がこれらの役割を十分に果たさなければ、何んらかの問題が起こったり、それを解決できなかったりとなってしまいます。


>>Reserchの一覧へ