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第23回(2007年9月19日)「インストラクターの国際基準・CompTIAのCTT+」
 インストラクターの技術標準というものがあってもいいのではないだろうか?
 シカゴに本部を持つCompTIAが世界中のプロフェッショナル・インストラクターから抽出したインストラクション技術を14のコンピテンシーに集約して知識とスキルの両面からテストを行いCTT+として認定制度を展開している。日本でも有数な研修会社が登録インストラクターの認定に利用するなど活用の兆しがある。

 今回は、CompTIA日本支部 板見谷事務局長から、認定資格の目的や特徴などをご説明いただき、その中でも「CTT+」の重要な要素などについてもCVT(後述)例題を含めながらご説明いただいた。 引き続き、2次試験ともいえるVBT(後述)のサンプルと評価を観ることにより、求められているコンピテンシーをどのようにパフォーマンスに表すかを考えることができた。

 CompTIA認定資格の目的は、ITサービス業界が認める、「お客様」に信頼いただける力を持っている“証”を提供している、ことである。 その特徴としては2つあり、
1.各ITサービス業務において、お客様の環境を理解し、改善できる能力を策定し、試験により評価することと、 
2.「顧客視点」に常に立つ、知識及び行動の「根拠」を持つ、行動に「ポテンシャル」を持つ、の3点を重視していることである。

 「お客様」からの信頼を上げる試験内容を提供するため、各業務分野の第一線企業から、現場の従事者をアサインし、職務分析・問題作成が行われている。 さらに具体的には、
1.市場のニーズ−人材が必要な分野、その必要性及び需要・調査
2.職務の分析−必要な分野での技術育成の職務・職能のガイドラインの作成
3.出題内容作成−報告書に基づき試験作成委員会による問題の提案・作成
4.試験開始−全世界一斉スタート
5.メンテナンス−問題の品質管理
6.改定−職務分析の最新化
の6ステップで展開されており、これにより特定のベンダーに偏ることのない中立的な職務分析・問題作成が可能となっている。

 CompTIAの認定資格の問う能力は、幅広く偏りのない知識と、最短で問題解決する行動プロセスを6つの能力分野に分析すると、
1. IT知識 2.業務知識 3.状況判断 4.環境対応能力 5.顧客環境理解 6.課題解決能力
となり、これらを定義することにより、採用企業にとって次のような多くのメリットが生まれてくる。
* 業務基準を置く事での、OJTの削減やトレーニングコストの削減
* 各レベル(新入社員、主任、管理職など)やパートナーなど実務評価基準
* 顧客満足度の向上、生産性の向上
* 採用指標(中途採用、派遣社員など)
が可能となる。

 インストラクターという業務の技術標準を「CTT+」として策定しているわけだが、その中のもっとも中心となる3つの要素を挙げておこう。
1.信頼性―「エチケット」・・・身だしなみ、マナー、配慮、常識など
「準備」・・・物理的準備、内容に関する精通など
「言語」・・・言葉遣い、ワーディング、敬語など
      「非言語」・・・動作、表情、話し方、抑揚、間など
2.共感性―相手がコミュニケーションに参加するための妨げ(不安、時間など)をなくす行動。より積極的に参加してもらうための行動。実際のやり取りの中でストーリーをその場で調整、強化したりするものを含む。
3.理論性―事前に聞く側のニーズを分析し、情報の明示を工夫しながらストーリーを立てる。
       相手の評価を感じとり、今後につなげる。
       セミナーのPDCAを展開する。

 認定試験の実施は2つあり、まずは一般的に言う筆記試験をCBT(Computer Based Test)として実施する。 CompTIA認定の試験会場に赴いてコンピュータによるテストで、90分で95問を出題し、70%の正解をもって合格とする。 一次試験合格者はVBT(Video Based Test)の受験資格を得る。 VBTは5人以上の受講者を相手に実施するセミナーを20分間のビデオ(DVDでも可)に収録し試験委員会に送って評価してもらう。 CTT+で定義する14のコンピテンシーの内ビデオで評価できる12項目についてパフォーマンスが表現されているかを評価され70%以上の評価によって合格となる。
 
 最近CTT+の認知度が世界的に上がり、自社の認定トレーナーとしての資格付与時にCTT+を必須条件にしている企業が増えている。 TurboLinax社、CertPort社、Adobe社、シマンテック社、CheckPoint社、マイクロソフト社などが代表的な企業である。 日本国内の企業内研修実施機関(研修会社、学校、塾など)でもその機関内のインストラクターの資格の必須条件として取り入れる、またはこれから採用を検討する機関も多くあると聞いて、今後が楽しみである。


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