サービス セミナー 研究サロン 事例集 企業情報
研修講師は誰にでも出来る簡単な仕事なのか?
 世の中には、「自分でも簡単に出来そうだな・・・」と思わせる仕事がいくつかある。
そして間違いなく“研修講師”もその中の一つに入る。多くの人には「人前で臆することなく話が出来れば十分に務まる仕事」程度に思われている。しかし、それは本当だろうか?

 私は最近「社内講師養成研修」の講師を担当することが多い。受講者のプロフィールは「社内講師として年間数十コースを担当しています」という人から「普段は現場のエンジニアなのですが急に来月登壇してくれてと頼まれまして」という人まで様々だ。
しかし、そのプロフィールを問わず多くの人に共通している「研修講師」に対する(好ましくない)認識がある。例えば次のようなものだ。

  • 自分の知っている知識を、とにかくプレゼンテーション(パワーポイント)資料に詰め込み、一方的に受講者に伝えることが研修講師の仕事である。
  • 且つ、プレゼンテーション資料に掲載されている情報量が100%だとしたら、そのうち20%程度が受講者に伝わればそれでいい。
  • なぜなら、研修内容理解の質と量は、講師の力量ではなく、間違いなく受講者の意欲で左右されるからである。

 確かにこの程度の認識であれば、「誰にでも出来る仕事」と言われても仕方がない。
 しかし、研修講師の仕事はこの認識では務まらない。研修講師の仕事は「知識を詰め込む」ものでも「受講者の意欲に依存する」ものでもない-「学習目標に向かって、いかに受講者中心で学びを促進させられるか」-これが研修講師の仕事である。そのために様々な「インストラクション」に関する専門的知識やスキルが必要になる。少なくとも「いきなり明日から出来る」類の仕事ではない。

何のために企業が研修にお金を使うのかと言えば、経営戦略の実行確率を高めたいからであり、言い方を変えれば、研修受講者には研修を機会にして何らかの「思考」や「行動」のチェンジを求められている。ここで冷静に考えてみてほしい。そんな重要な場を設計・運営する講師が「自分の知っている知識を詰め込めばいい、あとは受講者次第だ!」という認識で臨んでいるのであれば、その研修は企業の意図と大きく外れ、そして研修投資は全くの無駄金になる(受講した社員も『研修なんて業務の邪魔になるだけ』という意識が刷り込まれるだろう)。

 企業の意図は研修の学習目標に反映させる。研修講師の価値と専門性は、その学習目標の達成をどのくらい確実に支援できるかにある。特に、これから研修を担当される講師初体験の皆様には注意して頂きたい。講師には専門的な知識とスキルが必要である。「誰にでも出来る仕事」という意識は今すぐ捨てて頂きたい。

そういえば「講師養成研修」を受講者の皆様から、先日こんな声を頂いた。

  • 「研修準備前に、受講予定者に必ずアンケート調査やインタビューをしています。結果として研修コース設計を受講者の業務課題に合わせて、より具体的に行うことが出来ています。因みに、同僚の社内講師にそのこと話したら、『そこまで準備して受講者分析しているの!』と大変焦っていました。」
  • 「まず2日間の研修で学習してほしい項目を正確に定義し、次に研修の進め方を設計した上で準備して本番に臨みました(いつもはパワーポイント資料からつくっていました)。準備時間も削減できましたし、何よりも受講者から『非常にわかりやすかった』と言われました。」
  • 「講師養成研修で学習した、受講者にとってよくありがちな状況から話していく<興味を引くスキル>は、研修講師を実施するときだけではなく、日常的な人との会話においても使っていて、大変効果的です。」

 これだけ見ても研修講師にはインストラクションに関する様々な知識やスキルが必要なことが分かると思う。最後にもう一度。「学習目標に向かって、いかに受講者中心で学びを促進させられるか」-これが研修講師の仕事である

【佐野】
2011.10.11

>>Reserchの一覧へ