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モチベーション編(2)
モチベーションとは、目標達成に向けての行動を促し、完遂に至る心理的エネルギーである。心理的エネルギーとは、簡潔にいえば「意欲」「ヤル気」である。相手の意欲を引き出そうとするならば、そこに自分自身の「人間観」が問われることになる。モチベーションに関する理論を学ぶことで、すべてが解決されるわけではないが、諸理論を理解することは、「人間観」の幅を広げ奥行きを深める一助になるはずである。

モチベーション理論の2つの考え方

モチベーション理論には、「人間を動機づけるものは何か」を解明しようとする"コンテント理論"と、行動に至るプロセスやその持続力を解明しようとする"プロセス理論"の2つの考え方がある。
コンテント理論は、人間を動機づけるものは何か(What)を解明しようとするものである。代表的理論として、A.マズロー「欲求段階説」、D.マグレガー「X理論、Y理論」、F.ハーズバーグ「二要因理論」などがある。
プロセス理論は、人間が行動にいたるプロセス持続力はどのように働くか(How)を解明しようとしている。代表的理論として、E.ローラーら「期待・価値理論」、R.リッカートら「同一化理論」などがある。
本編は「プロセス理論」について述べる。

4 期待・価値理論
E.ローラー、V.ブルームらは、「個人の仕事の意欲(モチベーション)は、何らかの業種を生むという達成期待度と、その業績がもたらす報酬についての価値で示すことができる」とした。

すなわち、自分の努力によって望ましい業績が達成されると信じている場合で、その業績が自分にとって望ましい報酬を生むと考えている場合に、個人は一所懸命に働く。この場合、「望ましい業績」とは、職務上の業績であり、「望ましい報酬」とは、収入ばかりではなく、認知、昇進、集団からの承認も含まれる。

そして、この理論を職場に適用する場合の条件を次のように挙げている。

1)努力が業績に結びつくことが期待されていること
メンバーに対して能力的に不可能な職務を割り当てたり、とても達成できそうもない数値目標を設定する、などということがおこなわれていない。努力すれば業績を上げる見込みが得られる時に人は動く。

2)業績が報酬に結びつくことが期待されていること
相手があげた業績に対しては、報酬を必ず用意することが大切である。報酬とは、給与や賞与だけではなく、他者からの評価であったり、さらに重要な責任ある仕事を任せられることであったりする。業績をあげれば、必ずその報酬が得られるという期待を、相手に認識させることが大切である。

3)報酬が相手にとって価値あるものであること
報酬とは、相手の持っている欲求を充足し得る価値があるものという意味である。相手の欲求を正しく把握することが重要であり、報酬は相手にとって価値あるもの(こと)に結びついていなければならない。

つまり、業績をあげることで、それぞれにとって価値あるもの(こと)が得られるとの期待が明確にしめされたとき、意欲が高まり、それが行動に結びつき、その行動は継続される。

5 同一化理論
R・リッカートらは「仕事への意欲は、集団への同一化の程度と、集団のもつ目標の高さで高めることができる」とした。

同一化とは、自分を対象と一体化しようとする感情である。すなわち、対象が思い感じることを自分も同じように思い感じようとすることである。

なぜ人間は同一化感情を抱くのか、について下記のように説明している。

1)集団に帰属したいという社会的欲求を充足させたいため
2)社会的評価の高い集団に帰属することで、自我の欲求を満足させたいため
3)社会的評価の高い集団に帰属することで、自分の能力や社会的ステータスに対する自己イメージを強化したいため
4)帰属する集団において満足を得ることができた体験があったため。たとえば、自分の業績を仲間が評価してくれたことなど

以上がE・ローラーやR・リッカートらを代表とする「プロセス理論」である。彼らは、人間が行動に至るプロセス維持力はどのように働くかを解明しようとした。「人間を動機づけるものは何か(What)」を解明しようとする「コンテント理論」に対して「行動に至るプロセスやその維持力(How)」を解明しようとするものが「プロセス理論」である。


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