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モチベーション編(1)
モチベーションとは、目標達成に向けての行動を促し、完遂に至る心理的エネルギーである。心理的エネルギーとは、簡潔にいえば「意欲」「ヤル気」である。相手の意欲を引き出そうとするならば、そこに自分自身の「人間観」が問われることになる。モチベーションに関する理論を学ぶことで、すべてが解決されるわけではないが、諸理論を理解することは、「人間観」の幅を広げ奥行きを深める一助になるはずである。


モチベーション理論の2つの考え方

モチベーション理論には、「人間を動機づけるものは何か」を解明しようとする"コンテント理論"と、行動に至るプロセスやその持続力を解明しようとする"プロセス理論"の2つがの考え方がある。
コンテント理論は、人間を動機づけるものは何か(What)を解明しようとするものである。代表的理論として、A.マズロー「欲求段階説」、D.マグレガー「X理論、Y理論」、F.ハーズバーグ「二要因理論」などがある。
プロセス理論は、人間が行動にいたるプロセス持続力はどのように働くか(How)を解明しようとしている。代表的理論として、E.ローラーら「期待・価値理論」、R.リッカートら「同一化理論」などがある。


1 欲求段階説
A.マズローは、人間が生きている間に追い求める欲求を5つに分解した。
さらに、5つの欲求の間で人間にとっての緊急性の高いもの(低次のもの)から順位づけを行った。
         
高次 ・自己実現の欲求
|   (自分の可能性や潜在的能力を最大限に発揮したいという欲求)
|  ・自我の欲求
|   (他人から認められたい、尊敬されたいという欲求。
|   または、自分自身を尊敬したいという欲求)
|  ・社会的欲求
|   (帰属欲求ともいわれ、集団や仲間の一員でありたいという欲求)
|  ・安全・安定の欲求
|   (危険や脅威から身体的・精神的意味で保護されたい、
|   危険からは逃れたいという欲求)
低次 ・生命・生理的欲求
    (食べたい、寝たいというような、極めて基本的な欲求)

マズローはさらに、この5段階について以下の4つの仮説に基づいて理論づけている。

  1. 人間のあらゆる欲求は、突きつめていくとすべてこの5つの欲求に帰着する。
  2. これら5つの欲求は、最も低次の生命・生理的欲求から、最も高次の自己実現の欲求まで段階をなしており、低次の欲求が充足されない限り、それより高次の欲求は現れない。
  3. ある欲求が充足されると、その欲求はもう行動への動機づけ要因とはならない。
  4. 自己実現欲求だけは、それが充足されればされるほど強まり、完全に満足してしまうことはあり得ない。

2 X理論・Y理論
D.マグレガーは、動機づけの観点から対比し、賃金による刺激だけで労働者を管理しようとする伝統的管理の考え方をX理論、人間の自主性に着目した経営管理の考え方をY理論と名づけた。

【X理論】人間は生まれつき怠け者で仕事をしたがらないから、アメとムチで働かせるよりほかはない-という人間観。

【Y理論】人間は自己実現のために努力を惜しまないものであるから、大いに自主性を発揮させるべきだ-という人間観。

マグレガーの考え方は、マズローの欲求段階説を企業集団で働く人々に適用し、マネジメント理論の域にその理解を高めた。
X理論は生命・生理的欲求、安全・安定の欲求といった低次元の(物質的)欲求に対応し、Y理論は社会的欲求の一部と自我の欲求、自己実現の欲求といった高次元の(精神的)欲求に対応するというものである。
X理論・Y理論を職場適用するときに、X理論では、人が常に指示・統制するものと考え「悪」で、Y理論では人が個々の自律性を尊重するので「善」と結論づけてしまうのは注意したい。マグレガーが云わんとするところは、労働者の欲求段階が精神的なものに高まってくると、Y理論をもって動機づけられる労働者が多くなる-可能性が高い-ということである。


3 二要因理論
F.ハーズバーグは、職務の内容を動機づけ要因、職務の環境を衛生要因と呼び、それぞれが独立した関係にあることを発見した。

動機づけ要因

○やりとげた達成感
○能力を発揮できる仕事そのもの
○責任ある仕事を任される
○仕事を通じて能力向上と人間的成長が自覚できる
○仕事の結果に対する賞賛・承認

衛生要因

○組織の経営戦略・戦術
○マネジメントの統制度、自由度の加減
○職場の上下関係、仲間意識などの人間関係
○拘束時間や職場環境などの作業条件
○賃金の多寡

衛生要因が満たされないと不満足につながる。しかし、その不満が満たされたとしても不満足をゼロに近づけることはできるが、満足に結びつくことはほとんどない。
逆に、動機づけ要因は、満たされれば満足に結びつくが、満たされないからといって不満足に結びつくことは少ない。
この点から、ハーズバーグは従業員の活性化や職務満足の増大は、衛生要因の改善だけでは不可能で、動機づけ要因への刺激が最重要であるとし、「職務充実」の重要性を主張した。

【職務充実とは】

動機づけ要因としての仕事のあり方に工夫を加え、職務の遂行を通して意欲を高めようとする施策をさす。すなわち、メンバーにもPlanとSeeの機能を分担させることによって、従来の仕事を垂直的に充実させ、高度で責任のある仕事に挑戦させることで、仕事そのものの中にやりがいを感じさせようとするものである。

以上、マズロー、マグレガー、ハーズバーグの3人のコンテント理論であるが、それぞれにアプローチの違いはあるが、いずれもモチベーションで最も力点をおいているのは、「仕事を通じて、自分の力を最大限に発揮することによる自己成長のよろこび」といえるであろう。

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